「キッチハイク! 突撃! 世界の晩ごはん」書評
KitchHikeというウェブサービスがあり
そこのCTOの藤崎さん*1と飲む機会があった。 飲んだあとにKitchHikeのオフィスに遊びに行った際に、社長の山本さんもいらっしゃってこのサービス名と同じ名前の本を山本さんが出したというので一冊いただきました。
「読んだら書評を書きますね!」と言ったはいいものの1年半ぐらい経ってこれを書いている。まだアマゾンで売っていてよかった。
- 作者: 山本雅也
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2017/04/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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さて重い腰を上げて書評を書いているかというと。
先日からバックパッカーのバイブルとも言える沢木耕太郎の深夜特急を本棚の奥の方から引っ張り出して読み直していたところ、旅先で出てくる料理がとても美味しそうに魅力的に感じられた。
この旅の料理に特化した本があったよなぁというので「キッチハイク! 突撃! 世界の晩ごはん」を思い出したというわけだ。
「ちょっと世界一周してくるわ」と行く先々の国の家庭にお邪魔しては飯を食い歩いていた内容がこの一冊に収まっている。書き始めからこんな調子である。
いざ、モグモグ・ザ・ワールドだ!旅先の道端ででたった人に声をかけるのはもちろん、友だちの紹介(の更に紹介)、FacebookやAirbnbを介して、「あなたのおうちでご飯を食べさせてくれませんか」とアプローチしまくることにした。
完全にヤベー奴である。
1つの国ごとに章だっていて、雑誌のコラムとして連載していたものなので文も長すぎず読みやすい。書きっぷりはなんとなく石田衣良の池袋ウエストゲートパークシリーズの各章の終わりの方で事件の顛末やらが書かれているあたりを彷彿とさせる。
小難しく考えることなく読ませてくれる文章で暑い国のビールを飲みながら読むのが合いそうだ。
この本を一言で表現と「深夜特急 + 孤独のグルメ」と言ったところで、言い得て妙ではないかと思う。
この本を読んで、日本に馴染みのないなんか変わったものが食べたくなったら、キッチハイクのサービスで食べに行けばよいだろう(最高にうまいサービスへの誘導)
例えばこんなのとか、面白そうだよね。 ▼予約受付中▼ 12/09 シンガポールの定番朝食「カヤトースト」を食べよう! in 東京 - キッチハイク
さて、ソフトウェアエンジニア的な目線で、キッチハイクを語るとテックブログとてもよく書かれている。
みんなが飛びつきがちな最新のテクノロジーをガンガン使ってますというのではなくて、モダン過ぎずレガシー過ぎないいい感じに、システム開発を技術的負債が出にくいようスキルレベルが高くないメンバーでも開発できるようなサステイナブルな開発をしていることが読み取れる。
- 作者: 山本雅也
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2017/04/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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- 作者: 沢木耕太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/03/20
- メディア: Kindle版
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- 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックディストリビューション
- 発売日: 2002/03/20
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*1:藤崎さんはオレが選ぶ三本の指に入るイケメンCTOなのである。
中国広州市にあるリトルアフリカ、そこにやってくる彼らは実際どこからやってくるのかデータを集めて検証した
ことのはじまり
「その日暮らしの人類学」という本で、タンザニアの人の暮らしぶりを書いた本がある。
この本ではタンザニアから衣料品や家電の買い付けのために香港から中国本土に渡り買い付けに行くということらしい。
本文から抜粋すると、
なかでも広東省広州市には、サブ・サハラ以南のアフリカ系交易人が多く集まることから「チョコレート城」「リトル・アフリカ」「広州ハーレム」などと呼ばれる卸売商店街が形成されている。
中略
アフリカ系交易人が集まる場所は主に次の二つの区域であり、ここまで辿り着ければ、現地のアフリカ系住民や交易仲間に助けてもらうことができる。一つは白雲区の三元里周辺であり、もう一つは越秀区の小北路周辺である。
というように、広州市にはリトルアフリカがあるらしい。これは面白そうだということで2018年の3月に実際に上述の本に書かれている広州市の小北路周辺行ってみた。
「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済
「その日暮らし」の人類学 もう一つの資本主義経済 (光文社新書)
- 作者:小川 さやか
- 発売日: 2016/07/14
- メディア: 新書
最近、「さいはての中国」という中国のあまりニュースに流れない変わったところを取材している本が発売され、これにも広州のリトルアフリカが紹介されていている。これも買って読んでいて最初に埼玉の西川口が紹介されていておもしろい。
さいはての中国
- 作者:峰俊, 安田
- 発売日: 2018/10/03
- メディア: 新書
リトルアフリカの実際の様子
香港から国境を渡った深センから広州へ高速鉄道に乗車すると、確かに肌の黒い人達がチラホラいて、「ああ本に書かれていたことは本当なんだなぁ」と期待が高まった。
小北路周辺というのは、地下鉄小北(シャオベイ)駅付近のようで、地下鉄の駅を降りると中国系の人々の姿がめっきり減り、黒人・アラブ人の姿が目立つようになる。
ウイグルの人がやっているレストランがたくさんあり、同じイスラム教徒のアフリカ・アラブ系の人たちが食事をとっていた。 その中の1件に入ってみると、中国籍の中央アジアっぽい顔立ちの夫婦が店を切り盛りしていた。メニューに写真があったので多分ラグメンと思われるものを食べた。(ラグメンってこんな食べ物だったような気がするが書いていて自信がなくなってきた)
普段中国で見るのは漢民族ばかりなので中国は多民族国家なのだな実感したし、切り盛りしている奥さんは美人だった。
商業ビルの中にはモスクもありイスラム教に対応している。(お祈りをしている人にお祈り前に撮影の許可はとってある。つたない英語とジェスチャーなので若干通じたかどうか怪しいが)
配送可能な国々を表示している看板には、日本人には馴染みの薄い国旗が目立つ
アフリカっぽい服も実は中国で作られ輸出されていることがわかる
その他高そうな偽物の時計や、偽物のiPhoneXが売られていた。
特に偽物のiPhoneなんて隣の世界一の電気街がある深センではキワモノゾーンで売っており、中国でも本物のiPhoneを使っている人が多くて、 誰が買うんだと思っていたらどうやらアフリカで売ろうとしているのかもしれない。
データを取得してタンザニアから来る人達がいるのか検証
リトルアフリカを歩いている様々な国の人っぽい人たちが実際どこから来てどこに向かっているのか、Instagramのデータを集めて集計して、 先の「その日暮らしの人類学」にかかれていたとおりタンザニアからやってくる人たちがいるのかどうか検証した。
データの取得方法
Instagramには投稿する写真に場所データを付けて投稿することができる。
また中国本土ではInstagramは、YoutubeやTwitter、Facebookと同様に規制がかかっておりアクセスできないので中国の人はあまり利用していない。 それに地元の人から見ると何でもない駅でも、遠い異国買い付けに来た人たちにとっては旅の目的地なのだ。そりゃインスタにも写真を上げるだろう。
先述した通りリトルアフリカの一つがある小米駅付近であり、小米駅を場所データとして投稿している画像をまず集めることにした。
ここで小米駅の英語表記である「Xiaobei Station」をInstagramで検索すると下記のようなページを見ることができる。
- このページの画像データからユーザの情報を抜き出し、365人分のInstagramのユーザ名のリストを取得した
- このユーザ名のリストから、一人ひとりのユーザの投稿している画像データを一人あたり最大150件取得し、その中から位置情報が含まれているものを 20910件抽出した
生のデータは下記のリンクの「original」のシートに記載されている
pythongram_sample - Google スプレッドシート
このデータを元にGoogle Data Studioにプロットするとこのような世界地図にプロットしたものと、棒グラフで図示した。 (中国と香港は除外することでデータを見やすくしてある)
データ数の多い国別にランキングにしてみるとこの様になった。
順位 | 国 | データ数 |
---|---|---|
1 | マレーシア | 732 |
2 | タンザニア | 673 |
3 | ロシア | 590 |
4 | アメリカ | 552 |
5 | 日本 | 448 |
6 | タイ | 398 |
7 | フランス | 367 |
8 | イタリア | 294 |
9 | トルコ | 289 |
10 | オーストラリア | 279 |
考察
データ数が圧倒的に多かった中国や香港と同様にマレーシアが1位なのはマレーシア経由で広州へ来ている可能性が考えられる。
その次にタンザニアがあり、検証したかった「その日暮らしの人類学」にかかれていたとおりタンザニアからやってくる人たちがいるのかどうかということとに関しては検証できただろう。
また世界地図にプロットしてあるデータを見る限りアラブ圏、アフリカ以外の世界中から広州のリトルアフリカにやってきているのがわかる。 ロシアやアメリカ、そして日本が続くのも気になるところだ。Instagramのデータなのでも観光目的できた場合に撮ったデータの場合も大いにある。
そこでもう少し検証を進めて、出身国をある程度推測した場合データがどうなるか調べてみることにした。
出身国を推定
1ユーザあたり1つの国で1枚データをGoogle Mapに表示
小米の場所データを付随してInstagramにアップしていたユーザーは365人、1ユーザが1つの国で投稿しているデータを1つだけ取り出してみた。 つまりAさんが、アメリカで投稿したデータが2つ、日本で投稿したデータが3つあった場合、アメリカで1つ、日本で1つだけ抽出するということだ。
その1ユーザが1つの国で投稿しているデータを一つだけ取り出した抽出したデータは1714件となった。 生のデータは下記のリンクの「国ごと」のシートに記載されている。
pythongram_sample - Google スプレッドシート
Googleマップのマイマップ機能を使ってその1714件プロットするとより具体的に世界中に散ってることが感覚的にわかる。 (マップ上のピンをクリックして、URLのリンクを開くとその対象のInstagramのページを見ることができるようにしてある)
各ユーザの居住国を推定してグラフ表示
各ユーザの国ごとの投稿したデータの数を比較し一番投稿が多い国は住んでいるところのデータであろうと仮定した。要は 一番投稿が多い国 = 居住国 とし、小北駅にの位置情報データ月の画像をInstagramに投稿していた365人分のユーザの出身国を集計した。
生のデータは下記のリンクの「推定出身国」のシートに記載されている。
pythongram_sample - Google スプレッドシート
このデータも、Google Data Studioにプロットした(中国と香港は除外することでデータを見やすくしてある)
データ数の多い国別にランキングにしてみるとこの様になった。
順位 | 国 | データ数 |
---|---|---|
1 | タンザニア | 28 |
2 | マレーシア | 18 |
3 | タイ | 15 |
4 | ロシア | 12 |
5 | アメリカ | 11 |
6 | 日本 | 10 |
7 | ケニア | 8 |
7 | マカオ | 8 |
7 | フランス | 8 |
10 | 韓国 | 7 |
考察
圧倒的にタンザニアが多い、続いてマレーシア、タイと続く。 おそらくロシアからも中国南部の広州まで買い付けに来ていることがわかる、ロシアの場合は陸路で北の方で仕入れをしてそうだが、この辺も追って調べてみたい。
7位にケニアが登場していたり、プロットされて世界地図を見る限りサハラ砂漠あたりの以外のアフリカの各国々から広州に買い付けに来ているのが伺える。
出身国を各ユーザの投稿数の多い国と仮定した方法で、予想通りタンザニアが1位になったことは満足行く結果となった。
終わりに
香港に行った際には、重慶大厦という安宿がたくさん入ったビルで良く宿泊する。ヨーロッパ系、アジア系、アフリカ系の様々な人種の人たちが旅行や商売のためにやってくる。 初めてそのビルを訪れた2009年から特に商売できた人達が一体どこから来てどこに行くのかずっと気になっていた。
Webやテレビ、書籍で情報だけは知ることはでき、アフリカ・アラブ系の人たちが向かうらしいという広州に実際に行くことができた。 そして現地の肌感覚を掴んだ後に、今度はまたWebの世界を使って広州にやってきた人たちがどこから来ているのか調査することができた。
余談だが、これを読んで重慶大厦に泊まってみたいと思った人がいるかも知れないが自己責任でお願いしたい。2017年に泊まった際には、共同のトイレの取っ手が内側から外れていて23時頃に「Help me!!」と何度も叫ぶ羽目になった。人生で本当にヘルプミーなんて言うことになるとは。といった場所である。
「小北駅の位置情報付きでInstrgramに画像を上げているユーザの、他の位置情報付きの情報を使って調査する」という発想自体、現地で自撮りをしている黒人を見なければ得られなかった。Webを含むメディア -> 実地 -> Web の循環が、調査の仕方として面白く。大げさに言えば人の知を広げることになるんだなとしみじみ思う。
またこのInstrgramの位置情報を使って調査する手法は、それぞれの国や公的な機関が出した統計データよりも生き生きとしたナマのデータを取得することができて、社会学とか経済学の研究やフィールドワークに使えないかな? こういう方法があるよや使ってみたい人がいたら @kon_yu まで連絡ください。
どうやって画像情報を収集したのかと言うようなテクニカルな情報はこちら
石橋を叩いて渡るフリーランスエンジニアのなりかた という内容で登壇してきた
「フリーランスエンジニアでプロジェクトを進めることについて考える会」というもので登壇した。参加した感想などを書いていく
発表資料はこちら
石橋を叩いて渡るフリーランスエンジニアのなりかた
参加者にどういう人がいたか
- フリーランスのソフトウェアエンジニアで食ってる人
- 副業をしている正社員
- 発注している人・予定のある人
ぐらいでアンケートを取ったら フリーランスで食べている人が多かった。
オレの発表内容の半分は発注している人向けだったので、懇親会でお話できたのは発注側の人がほとんどだった。
フリーランスになったはいいが正社員のときのほうがよく考えたら稼げていたや、働く時間が多くなってしまったなど、哀愁のこもった話が本当にあるのか?
実際にひどい目にあっている人がいるなら聞いてみたかった。ソフトウェアエンジニアについてはそんな人いるのかな?
作りたいものがないという人へ
わたなべさんの発表では、自前で作ったリアルタイムに質問のコメントを画面に表示するシステムを使っていた(すごいね)
その発表の中「個人でなにか作ってアウトプットしよう」という辺りで「作りたいものがないです」というコメントが流れてきていろいろ思うところがあった。
そのコメントを見た瞬間には「それ向いてないからソフトウェアエンジニア辞めたほうがいいんじゃない」と思ったけども、もう少しどうやったら作ろうと思うモチベーションが湧いてくるか考えてみる。
圧倒的にインプットが足りてない
単純にプログラミングの技術が足りていないのもあるかもしれないが、ここでお勧めていておきたいのはプログラミング以外のインプットを増やすことが作りたいものを作る原動力になるのではということだ。
プログラミング技術以外のものを本を読んだり、別の業界のテクノロジーを見学したり、他に趣味を持ったりして、その趣味をITで便利にしたいところや、これとこれを組み合わせてたら面白いかもという発想が生まれる。クリエイティビティの源泉は多量のインプットであると言える。
ちゃんとしたもの作ろうとしすぎてない?
せっかく作るからにはバズらせようとか、そのサービスのページのお問い合わせから仕事の依頼が来るようにしたいとか考えるからなかなか手が動かないんじゃないだろうか
そういうのはまだまだ考えなくて良くて、作品をたくさん作って公開していった先にあることだ。
精度が悪くてもバグが有っても、自分が飽きないうちに動くところまで作って公開するのがいい思うよ。
この辺のことは前にインタビューを受けたこの記事に載ってる
クソアプリアドベントカレンダー
あんどさんとわたなべさんと、オレもクソアプリアドベントカレンダーでつながって、 毎年しょうもないものを作っている。
そのクソアプリと、彼らが自分で作ったサービスでインバウンドで仕事をゲットしているは別の話だからね。イベントのハッシュタグを見るとクソアプリで仕事が取れるっぽいという感想が見て取れた。
違うからねオレ毎年クソアプリアドベントカレンダーに何個も出してるけど、クソアプリで仕事をゲットしたこと無いよ!!
あいつら最近うっかり役に立つものを作って公開してるのさ。クソアプリの精神を忘れちまったのよ。はよ戻ってこい
その他気になったこと
- イベント参加者のツイートな中で気になったハッシュタグ
#駆け出しエンジニアと繋がりたい
- 「あいつも勉強してるからオレも勉強しよう」がりピアプレッシャーがかかって面白いなぁと思った。
- それで知り合った人を見るのにTwitterばっかりやってたら本末転倒だけどね
- Nuxt.jsもいいけどオレはNext.js派だよ
- Vue.jsも馴染んでいいけど、JSについては長いもので巻かれる派なんでReact.jsを利用しているNext.jsが好きだ
- パフォーマンスを考慮したプログラミングをしよう
- ジュニアレベルのプログラマへのアドバイスとして「メモリやCPU、ファイル読み込み、データベース、ネットワークの気持ちになってプログラミングしろ」と言うんだけど、大体半笑いされる。だけどさパフォーマンスが求められるレベルの仕事をいつまで経ってもできないよね?
- ってことをこのQiitaの記事書きながら思った RailsのSQLキャッシュと変数を使い回す場合のパフォーマンス比較、7000倍差
他の3人の発表のリンク
あんどさん フリーランサーのインバウンドマーケティング
なべわたさん 声をかけられるフリーランスエンジニアになるには - Speaker Deck
にしこさん 20180904_kintoneなどを活用することで正社員リソースを一切使わずにフリーランス協会のシステムを構築した話 - Google スライド